じりじりと皮膚を焼く日差しの中、テスト前の教室は珍しく静かで、噂話は聞こえてこない。


私の目の前で、どうにかヤマを張り、少しでも覚える場所を減らそうと教科書とにらめっこしている奏をみると、今日も平和だなってしみじみと感じられた。


土曜日には、準決勝で太一の試合がある。
ちょうどテストが金曜に終わるので、今度こそ美緒ちゃんたちと応援席で見たいな。


「なあ、深雪、此処なんだけど」

「ん―?」

教科書を見せられて、覗きこむ。

奏が指で示す文章を、私も指でなぞった時だった。


「あっ」

「悪い!」

たまたま指が触れただけなのに、私も奏も仰け反ってしまった。

触れた指先が熱い。

意識、しすぎてなんだかへんな雰囲気だ。


「あ、や、此処、授業でやらなかったから出ないかなーと」

「授業で出たよ。奏が気持ちよさそうに寝ている時に」

ばーか、とからかうと、やっと少しだけ空気が和んだ。

「まじで!? 聞いてて良かった。ノート、開けてスら無かったかな」

そんな緊張感のない奏に救われつつ、私も単語帳をノートに写す出した。

馬鹿だよね、奏は。

授業中でも部活中でも、私は奏を目で追っているんだよ。

授業中に寝ている奏なんてよく見てるにきまってるじゃんか。


長い片思いが終わったのに、なんだか満たされないのは哀しい。

もうちょっと、ラブラブなカップルみたいな事、してみたいのにテストと照れが邪魔をする。