「えっと、氷で冷やしてプスリだったよな。消毒液塗って」
「えっ!? ちょっと待って! 此処でしないでよ。私、痛いの無理だよ!」
「あっ? でもせっかく貰ったんだから早く付けたい! ちょっと待ってて」
下に降りて氷と消毒液を取って来るつもりなのかな?
無理だよ。無理! 血とか出るんじゃないの?
「止めてよ、私帰る!」
「深雪!」
慌てて伸ばされた手は、窓枠を掴んでいた私の手を掴んだ。
「――深雪」
じっと顔を覗かれる。奏の真っすぐな瞳に。
奏の視線が、私の唇に降りて、耳まで赤くなっていく。
その意味と雰囲気が伝わって私も喋れなくなった。
甘い、蕩けるような、むず痒い時間が流れる。
キスなんて、した事ない。
怖い。でも、夢じゃない。奏から近づいてきている。
ぎゅっと閉じて、降りて来る奏の唇を待った。
ぎゅっと、カーテンを握りしめて。
「あれ? 窓が開いてる」
「!?」