親と弟はテレビを見ながら笑っている。

それを確認して、弟の窓から奏の部屋の窓を叩いた。


「入れて」




「よっ。待ってました!」

本当に待っていたのか、珍しく宿題のノートが広げられ、部屋が奇麗になっている。



「太一と一緒に選んだんだからね」

「うんうん。あ、まだね。あと、6分」

本当に意外と細かい奴だって思いながらも、そわそわしている奏が可愛い。


「太一は来なかったのか。本当にあいつは気遣いが上手いな。来ても嬉しかったのに」


「――私らのキューピットでもあるのにねぇ。太一が教えてくれなかったら、私、勇気なんて出なかったのに…」


「ん? 勇気?」

手持無沙汰から、もじもじと髪を弄っていた奏が尋ねて来る。


「ほら、私の中学最後の試合。助けてくれたのは本当は奏なんでしょ?」


ずっと、抱き上げて車に乗せてくれたのは太一だとばかり思ってて、ちゃんと御礼なんてしてなかった。


「ん? 何何? 最後の試合って深雪が怪我して太一がお姫様抱っこしたあれだよな?」



――え?