「わー、浜松のキャプテンですよね。甲子園頑張ってください!」
「応援してます!」
奏とは反対に、男バスの一年に取り囲まれているのは太一だ。
まるで本物の野球選手みたいに一年たちに話しかけられているけど、慣れているのか優しい眼差しで頷いている。
「じゃあ、行こう、太一」
「ああ、いいの? 俺は気にしなくても」
「いいの。いい」
太一の学ランの袖を引っ張ると、挨拶もそこそこにその場を離れた。
「お、じゃあ、デート楽しんでねー」
ひらひらと手を振られたら、後ろから蹴りたくなる。
でもいい。混じってやるか。
いい。
別にいいの。
いっぱいいる女の子たちに混じってもつまらないんだから。



