あれは真夏だった…





　
　しおりが体育の授業でぶっ倒れて、早引


きしたんだ。



　
　熱中症ってやつ？





俺、授業さぼって、屋上で寝てたから、気


づいてやれなかった…



　
　
　何かしおりが不憫に思えてきてさ、しお


りのためにできることないかってあれこれ


考えたんだ。





　
　そしたら、しおりって物好きで、毎日授


業をノートに書き写してたのを思い出して


さ。





　お見舞いがてら、ノート持っていってや


ろうって。




　それで、生まれて初めて真面目に授業聞


いたんだけどさ…






　俺バカだから、先公が何言ってんのか


さっぱりなんだよ！





　いや最初はさ、この先公、俺が珍しくや


る気出したから、わざと難しい外国の言語


を話してるんか思ったけど、やってるの現


代国語だからね…

　
　さすがに自分のバカさ加減には、うんざ


りしたけど、仕方ないから先公の話した言


葉、一言言一句ノートに書きとったん


だ。



　「えーと、」とか「伊藤ここ読んでみ


て」とかも全部！




　
　おかげで手首使いすぎて、軽い腱鞘炎に


なっちまったぜ。







　しおりの家に向かってる途中、川沿いで


犬の散歩してたしおりのママにばったり


会っちゃってさ。




　「あら、しおりのお見舞いに来てくれた


の？　今のぼる君も来てるわよ」って。




　とっさに、「いや、見たいテレビがある


んで今日はやめときます。」


ってわけのわからんこと言っちまった…






　だってよ、バカな俺が汚い字で書いた


ノート見るより、のぼるが書いたノートの


方が断トツしおりもわかりやすいに決ま っ


てんだろ？　







　それに２人の邪魔するほど俺は野暮じゃ


ねぇからさ…











　結婚式まであと10日。