ルキアは一人で広い空間を持て余していた馬車に少女を運び入れた。
自分と向かいの席にそっと横たえる。
身体の動きは呼吸に合わせて上下していて命に別状はないことが見てとれた。
肩まで流れる髪にも泥がこべりついていてそれが顔にも張り付いていた。
優しく取り除いてやると隠れていた少女の顔が姿を見せる。
長い睫毛は伏せられていて綺麗な扇状を描いていた。
顔もところどころ砂で汚れているがそれでも、着飾った姿でにおいの強い香水を撒き散らして自分に寄り添ってくる女達よりも美しいと思えた。


宮廷で待っていた護衛は馬車の扉を開け驚いた様子でルキアと少女を交互にみつめた。
「ルキア様、その少女は一体…」
「拾った。」
「ルキア様が…」
「おい、こいつの手当てをして身体を拭いてやれ。」
未だに信じられないという顔をしている護衛をよそに横に控えている女官に少女を預けた。
「目が覚めたら俺を呼べ。
 …聞きたいことがある。」
「かしこまりました。」