今まで決まった女性を誰一人としてそばにおいたことのないルキア
というより、ルキアは誰に対しても興味がまるでなかった。
そのルキアがある日、泥にまみれた少女を拾ってきた。
護衛に渡すでもなく自らの手で抱きかかえ馬車から降りる。
さらには足繁くあの少女の元へ通っていると聞く。
ずっとルキアのことを見てきたエリシャにとってはどれも信じがたい驚愕の事実だった。

それまでは幼なじみである自分が他の女に比べてルキアに一番近い存在だと思っていた
ルキアがいつかは自分に振り向いてくれるかもしれないと…
だがその希望を寄せていた可能性もエリシャの前で音をたてて崩れさった。



偶然にも彼が1人の少女を連れ庭園へ歩いていくのを見てしまった。
エリシャも一度も招かれたことのない場所に…
エリシャはあの庭園の部屋はルキアの心そのものなのではないかと感じていた。
ルキアはどこか虚勢を張っていて他人を近づけないところがある。
…それはまるであの部屋みたいに心に鍵をかけているかのよう
あの何の力もない少女が温室に入ることを許可された
あの少女がルキアの心の中に入ってゆく……