大西洋に浮かぶ島エストリア。
そこはかつて一国であり王族公爵であるシュタットフェルト家が治めていた。

それが14年前に宮廷で起きた火災により一転する。宮廷は全焼し王族であるシュタットフェルト家の血筋は途絶えた。
原因も解らないまま凄まじい炎とともに事件の真相は闇の中に葬られた。

その後、統治する者のいなくなった国は
貴族の中で他国への侵略を推し進める過激派とそれに反対する保守派に意見は別れた。
対立はおさまることなく一国はジェラルド率いる過激派とルキアの父親であるエドが率いる保守派とで南北に分断された。
エストリア王国から分離した過激派は国名をサリアと命名した。

一つだった国は今やサリアとエストリアに分かれてしまった。


一人の兵士が扉を叩いた。
「ルキア様、お伝えします。少数ですがサリア軍の動きがボレの森であったそうです。」
「ボレで?……偵察に行く、今すぐ馬車の用意をしろ。」
兵士は返事をして足早に去っていった。

二国は山脈や川で分かれているが広大なボレの森では境界線を引くことができず、実質どちらの国の者も入れるようになっている。
勿論それは森の中だけで、森の出入り口には国境の門があり兵士が守りをかためている。
ボレの森の近くには辺鄙な村しかなくその村人でさえも野獣の住みかである森にはめったに入らない。

そんな場所でサリア軍は一体何をしていたのか