母上は王室のシュタットフェルト家に仕える女官だった。

そしてあの日

……火事に巻き込まれた

生存者は一人もいなく、建物は全焼してしまったため原因は事故なのか人為的なものなのかも未だに不明だ。

貴族の中で最も高い公爵という爵位を与えられているヴィルフォード公爵の下に嫁いだ母上

女官であったとはいえ、本来ならば護衛に守られるべき存在だった。

なのにーー…


『ルキア、私が帰ってくるまでお父様の言うことを聞いてちゃんと待ってるのよ』

ーーその言葉を最後に母上がこの屋敷に再び足を踏み入れることはなかった。