それから一週間が過ぎてもアリシアの記憶が戻ることはなかった。
アリシアは部屋に引きこもってほとんど外に出るのを控えていた。

ルキアが部屋を訪れることもあったがアリシアはそのたびに身体が勝手に身構えてしまっていた。

「アリシア様、相手が国王なので怯えていらっしゃるのですか?
私からすれば少なくともアリシア様に対してはルキア様は優しく接しているように見えますが…」

彼はきっと森に倒れていた記憶もない自分を心配してくれているのだろう。
忙しい公務の合間をぬって様子を見にきてくれていることもジュリアから聞いていた。

彼は怖い人ではない。
アリシアもここ数日ルキアと接することでそれは解っていた。

けれど…身体は勝手に反応してしまう。
ルキアや特に宮廷を歩いていると時々すれ違う兵士たちが怖かった。


まるで自分が追われるかのような錯覚に陥ってしまう。