初めてアリシアの部屋を訪れた時のことを思い出す。
栗色の髪は中ほどから毛先にかけてくるくると自然な弧を描いて肩へと流れていた。
きめ細かく整った白い肌。
髪より少し濃い茶色をした瞳は見ているだけで吸い込まれそうだった。
誰もがみても美しいと言葉を零すだろう。
柔らかそうな髪に触れてみたいと思ったが手を実際に伸ばすことはなかった。
アリシアが…少しのことで壊れてしまいそうなほど儚げだったから。
記憶がないことからの不安なのか
国王という人物に対する恐れからか
…アリシアはひどく怯えていた。