「はぁっ…はぁっっ……」
少女は無我夢中で森の中を走り続けた。
昨日から続いた大雨の影響で緩んだ地面に足を取られながらそれでもただ前に向かって走り続ける。
背後からは数人の男たちが太陽の光を浴びて白銀に光る剣を翳しながら迫ってくる

この人たちは誰なのか、一体なぜ自分が追われているのか。
全く解らなかったが1つだけ確かなのは…捕まれば殺されるということ
『アリシア、逃げ切るのよ』
『お母さんっ…!!』

木々の間を抜け出ると視界が開け、目の前には口をぽっかりと広げた崖があるのみだった。
「…そんな」
後ろを振り向けば剣をもつ男たちが待ち構えていた。
もう逃げ道は残されていなかった。