店はオープンしたてだけにお客さんもたくさんいて
注文を終えると、店員さんはそそくさと次のテーブルへ行ってしまった
「やっと名前で呼んでくれた」
そのあとすぐ、彼がそんなことを言ったので
あたしはさっき、初めて彼を「ケイトさん」と呼んだことを思い出す
なんか恥ずかしく間が空いちゃったけど
「ご、ごめんなさい…」
「え?なんで謝るの、嬉しかったよ」
そう言ってまた笑われた
というか、この人はずっと笑ってる
ニコニコしてる
すっごく幸せそうに
楽しそうに
「でも、さん付けしなくていいよ。あと敬語もやめて笑」
「あれ、あたし敬語でしたか?!」
「いや、今もじゃん…ははっ」
あ、本当だ
今初めて気づいた
なんかもう彼が
「ケイトくん」が
あたしの中ではすごく尊いような気がしていたから
そしてまたすごく、笑われている
「わ、わかった。直しま……直す」
「うん、ありがとう」
なんだか敬語をやめると落ち着かなくて
胸がムズムズした
なんだろう、なんか変な感じ
ケイトくんといると、みんなこんな気持ちになるんだろうか
でも、嫌いじゃないな…

