『佐緒里、バイバーイ。また明日ね。』

『あ、鈴、バイバーイ。』

友達の鈴と帰りの挨拶をして、佐緒里は学校をあとにした。










『佐緒里、今帰り?』

『うん。そうだけど。何?榊?』


佐緒里は、家につく5メートルぐらい前の所で声を掛けられた。

『いやー。何もないけどさ。オレも今帰りだからさ。』


『そう。』





『どうして、私の後をついてくるの?榊の家はあっちだよね?』


榊と佐緒里の家は近い。一軒挟んで、むこうとこっち。

むこうとこっちという風に、家の方角は違う。

左と右。

『うん?今日は、佐緒里の家で、夕飯食べるの。知らんかった?』

『知らないし。お母さんもお父さんも、何も言わないし。』

佐緒里は、そう言いながら、玄関の鍵を開けて家の中に入った。

もちろん、榊も佐緒里のあとに続いて。

お父さんはまだ帰ってないみたいで、家の中にはお母さんだけがいた。


『あ、佐緒里、榊くん、おかえり。』

『ねぇ、お母さん、今日、榊がこの家で夕飯食べるなんて聞いてないよ。』


『えっ、言ってなかったっけ?別にいいじゃない?榊くんがきて困ることないでしょ?佐緒里。榊くんの両親、帰りが遅くなるみたいだし。』


『まぁ良いけど…。でもそれなら…』

『ぐちゃぐちゃうるさいわね。晩御飯、大勢で食べた方が楽しいじゃない?』

『まーねー。』

『わかったんなら、手を洗って、勉強でもしたら?榊くんもね。』


『えー。』

『行こうぜ。佐緒里。』


『ちょっと…。』


佐緒里は、榊に引っ張っられた。








『榊、ゲームしたかったのね。』


『おう。勉強嫌だし。』

『嫌って。あんたねぇ。お母さんに受けがいいからね。まさかゲームしてるなんて、夢にも思ってないだろうね。あぁ、かわいそうなお母さん。』


『佐緒里、おばさんに、言う気?』

『いわないわよ。言っても無駄ってもんだよ。』

『佐緒里は、いい子だよね…。言ってもいいのに。』


榊は、ゲームのコントローラーから手を離し、佐緒里の頭をなでた。


『言ってもなんもなんないし。ほんと、いいよね。受けがいいって。』


榊は、軽く笑いながらまた手をゲームのコントローラーに戻した。


『で、佐緒里は、お母さんの言いつけ守って、勉強してるん?えらいねー。』

『バカにしてる?』
『ちょっとね。』

『何?』


佐緒里は、椅子から立ち上がって、手にしてたペンを机に置いた。


『たんま。ジョーダン。叩くなよ。』

『あら?まだ叩いてないわよ。』

『叩こうとしてるじゃん?叩く態勢…。』

『そんなことないよ。ちょっと疲れたから、体伸ばそうかなっと。』

『嘘。絶対違うし。って、佐緒里大丈夫か?』


佐緒里は、体を伸ばそうと腕を思いっきりあげた表紙に、バランスを崩して、床に仰向け状態で倒れた。


『いたっ。』

『バカだな。』

『これは、自分でもバカって認める。』

『認めるんだ。そこは。』


榊は、既にゲームのコントローラーから手をはなしてる。




『あ、佐緒里の足って白いよね…?』


佐緒里のスカートから出てる足を見て、榊は言った。


『何よ。こんな時に。白いとか。手を差し伸べるとかできないの?』

『無理だね。佐緒里によくしたって何の得もないし。』

『何!』

『いや。別に。でも白いよね。』

『榊、足撫でないで、手!』

『手がどうした?』

『手、貸して。』

『自分でたてるだろ?』

『うーん。でも貸して。』

『起きあがれないの?』

『そうみたい。だから、早く手。』

『わかった。でもその前に…。』

『何?』




『何…。』

『はい。鼻血でてるし。』

榊は、ちょうど倒れた佐緒里の頭の上にあったティッシュ箱から、

ティッシュを取って、まだ倒れたままの佐緒里の鼻を拭いた。


しかも、ティッシュを取るとき、榊は、佐緒里の体に覆い被さるように取った。

榊に少し好意をもってる佐緒里としては、いろいろな意味でドキドキした。


















『もう、鼻血だしてる佐緒里の顔、なんか、変。』

『変って何よ。』


『変だもん。』


『榊ぃ~!』