「あ、あの・・・。あの。あの、だ、大丈夫・・・ですか?」

閉ざされた空間の外からの声に私はやっと我に返る。

「は、はい!あの大丈夫。大丈夫です。はい。」

って、どれだけ沈黙してたんだろ、私・・・。

ずっと彼のことを見つめていたのよね。彼はかな~り困ったような顔をしていた。

「あ、あの何かお探しですか?」

「い、いやあの、その・・・。」

もう、さっきの空想(妄想?)が頭から離れなくって、恥ずかしくって、もうこの場から一刻も早く逃げ出したかったのです!

さっきまでは若き直木賞作家にでもなれそうだった自分が見る影も無く、それこそ言語障害にでも陥ったように彼と話す言葉がまったくひとつとして見つからなかったのです。