日も暮れ、辺りが暗闇に包まれ始めた頃。
俺の目の前には、あの男が――――クレープを頬張りながら立っていた。
もぐもぐと。口を動かしながら、じっと俺を見つめてくる。
…どうしようか
ごっくん、と。彼の喉が鳴る。
「……楽しかったか、みゆ」
無表情にみゆに話しかける。みゆは笑って答えた。
「うんっ。お兄ちゃんがいろんな所に連れてってくれたよ」
「へぇー」
また一口、クレープを口に含んだ。
その様子はさもどうでも良さそうなのに、みゆは幸せそうだ。
いっぱいだよ!そう言って、あの後買いだめた物を両手に広げて見せる。
ピクリと男の眉が上がった。そのまま視線がこっちに流れて、体が震えた。
な、なんだよ……。俺だって別に買いたくて買ったんじゃなくて、強請られて仕方なくなんだよ。そう言いたいのに声が出ない。
鈍く光がともった瞳が俺を射抜いてくるからだ。
「…服に、食い物、ぬいぐるみに……ピン?これ全部か?」
みゆから手渡されたものを、一つ一つ訝しげに見る。
「お兄ちゃんお金持ちなの!」
「ほぅ」
「いや、違いますから!それ今月のお小遣い全てです!」
なに勘違い産むような言い方してんの!
男がにやりと笑うのに、背筋がぞわっとする。


