浮気男と俺様男





階段を降りながら

先程のことを思い返していた。



もう思い出したくはないことだけど

やはり鮮明に頭に浮かんでくる。



女の吐息。擦れ合う身体の音。

智哉の名を呼ぶ甘い声。


考え出すと止まらなくなり、

また目に涙が溜まった。



もう一生消えることのない、傷


心がえぐられた気分だよ






「あ…。篤稀くんに、ちゃんとお礼言えてなかったな」



ん?

いや、言ったか。


寝てると思ってたから直接的には

言えてないかもしれないけど

あの時、狸寝入りされてて聞かれてたし



「いやいや。
また後でちゃんとお礼言おっと」



少なからず、篤稀くんがしてくれたことは本当に嬉しかったし

一緒にいてくれただけで、ほんのちょっとでも気持ちが軽くなった気がする




けど、やっぱりまだ篤稀くんのこと怖いから、あまり深入りするのはよそう……