「夕?どうしたんだよ?
ボーッと突っ立って。」
その声に、じわりと熱くなったと同時に心が軋む音が聞こえた気がした。
「蓮…」
幼馴染みの、蓮。
その純粋に心配そうな顔を見て、重い気持ちの原因が分かった。
ふっと視線を反らす。
「だ、大丈夫!
ていうか、瀬川さんは?」
…馬鹿。自傷行為もいいとこだ。
「え?ああ、今日は風邪で学校休みなんだってさ。」
蓮は、何冊かノートを抱えて立っていた。
きっと、これからそのノートを届けに行くのだろう。
瀬川さんの話をするだけでわかる、その幸せそうな表情。
私の心に、黒い染み、一つ。
「そっか、早くそのノート、愛しの純ちゃんに届けてきな!」
「い、愛しのって…!!」
黒い染み、二つ。
ひとしきり蓮をいじり倒したあと、蓮は不意に思い出したように、でも後ろめたそうに口を開いた。

