…
「露村先輩、居ますかー?」
屋上に着いたのはいいんだけど、肝心の先輩が見当たらない。
ふと目に入った雲が厚くなってきている灰色の空は、まるで複雑な思いが渦巻く私の心のようだ。
「はい、居ますよ」
「わっ」
いきなり真後ろから声がかかり、思わず飛び退いた。
し、心臓がいたい。
「ははっ、驚いた驚いた」
「せ、先輩…」
相変わらず、茶目っ気たっぷり。
なんというか、私に気を使わせないようにしてくれてるのかな。
「とりあえず、そこの屋根の下に移動しよう。
曇りの方が紫外線強いらしいよ。」
だから私も、なるべく普通の会話をするように心がけた。
「そうですね。先輩も気にするんですか?紫外線とか。」
「うーん、肌弱くてね。」
「なるほど。」
「今日はほんと、曇ってるな」
空を見上げた先輩が読めない表情で呟く。
「そうですね…あ、先輩、昨日は色々とありがとうございました。」
「…うん。ちょっとは落ち着いた?」
「はい。あ、まずジャージ返しますね。…バニラクッキー好きですか?」
「あ、いいのにそんな気を使わなくても。
でもバニラクッキーは好きだよ。ありがたくいただきます。」
「私、蓮に告白しようと思います。」

