*side時雨*
少し。
いやかなり、悔しかった。
何って、中原さんを助けられなかったこと。
『中原夕が集団リンチされてる』
その噂を聞いたとたん、俺は中原さんを探しに構内を走り回った。
けど。辿り着いたときには既に水を被ってて、しかも庇った相手は戸川蓮の彼女である瀬川純。
状況を把握して焦った。
このままにしたら、またさらに傷つくかも知れない。
慌てて駆け寄ろうとした。が。
…悪い予感は当たるものだ。
そこに現れた、戸川蓮。
彼の登場で、中原さんが傷ついたことは確実だった。
どこかに去っていく中原さん。
きっと何か言われたにちがいない。
あいつ、この期に及んでまだ気づかないのか。
引き留めにいこうとした二人を、俺は止めた。
「夕のことなら、俺に任せてもらおうか。」

