*side純*



中原さんを追いかけようとした蓮君のことを引き留めた自分は、気づいたら思ってもないことを口にしていた。



「あ、私も、一緒に行く…」



本当は、焦ってるの。


わかってるよ?
蓮君にとって、彼女は幼馴染みだということくらい。


けど、二人は私が追い付けないほど、距離が近いような気がして。



いつか、蓮君が中原さんの気持ちに気づいて、そっちに傾いてしまったら…そう思うと、怖くて仕方ないの。



ねぇ、蓮君…


「大丈夫だよ。なんなら、俺から伝言とか…」



こんな質問、酷いかな。




─彼女と幼馴染み、どっちが大切なの?


きっと、蓮君なら困ってしまうんだろうな。



想像以上に顔に出てしまっていたみたいで、蓮君が慌てて声をかけようとしてくれた。



「じ、純…」




でも、それを遮るようなテノールが響いた。



「"夕"のことは、俺に任せてもらおうか。」