言いたいことが言い終わったのかと思えば、今度は純に近づいて、さっきよりも落ち着いた声で語りかけた。
「君も…気づいてたんだったら、わざわざ頼ったりしないであげて。
彼女はまだ傷が癒えてないんだ。」
純の肩が、ビクッと震えた。
俺はそれを、見てるだけしかできなかった。
俺が、夕も純も傷つけてる?
そんな、二人とも大切な存在なことに変わりないのに。
─キーンコーンカーンコーン…
なんだか、チャイムが遠くに聞こえる。
「チャイム鳴っちゃったし、二人とも教室に戻りな?
夕は、俺が様子を見てくるから。」
そうしてまた、二人で残された。
重苦しい空気が、暑さとともにまとわりつく。
「…あいつ、なんかあると、右手の拳を握り締めるんだよ…」
溢したように声が出た。
昔から知ってる、夕の癖。
俺は、夕と幼馴染みでいられないの?
なぜか、そんなことを考える。
「…え?」
「俺のせい、なんだろうね。
ごめんね?純。
でもだから、ちゃんといってほしい。」
純が、どう思ってたのかを。
はっきりと目を見て、問いかけた。
戸惑っている目は、覚悟を決めたようにゆっくり見返してくる。
「分かった。」
結局、授業をサボらせることになったのだった。

