そう思っても、足が動かなかった。



「純、なにもされてない!?」




「だ、大丈夫だってば…それより、中原さんが私を庇ってくれて」




見るな。
私を見るな…




「夕!大丈夫か?」



お願いだから、見ないで…!!




「ありがとう、…純のこと助けてくれて。」



ああ、やっぱり私は最低だ。

幼馴染みとして、喜ばなきゃいけないのに喜べない



まだ、ダメだった。



「そんなんじゃ、ない……」


「え?」



でも、それでも今は逃げたい。

まだ幼馴染みの枠は外したくない。



瀬川さんの不安そうな顔が目に入る。



だから私は、精一杯いい幼馴染みを演じるんだ。


右手にぎゅっと力を込めて、笑顔を作った。




「なんでもない。
ほんと、遅かったんだけどー。

私がいたから良かったものの、いつも守ってあげられるわけじゃないんだからね?」



(守りたかったのは、自分の盾のくせに)




「…おい夕、お前やっぱり大丈夫じゃ「彼氏なんだから、ちゃんと守ってあげないと!ね?瀬川さん。」


目なんか、合わせられない。


だって、こんなに汚れてる。



「おい!」



私は蓮に、背を向けた。



「じゃあ、とりあえず私は保健室行ってくるわ。」




「おい、夕!!」




先輩、やっぱり私、変わってないよ…



苦しい胸を抱えて、私は走るしかなかった。