「偽善者」
その言葉に縛られて動けなくなる。
だけど。
さっきのホースが目にはいった。
その先は、瀬川さんに向けられている。
やっぱりこいつら、水掛ける気だったんだ…!
無理やり、足を動かした。
間に合え……!!
誰かを押し退けて瀬川さんの元に向かうとき、誰かが呟く。
「なんだ、図星じゃん。」
その声は、本当にあの子達の声だったのだろうか。
まるで、自分の声のように聞こえた──。
─バシャアッ
「な、中原さんっ!」
瀬川さんの悲鳴。
「や、やばい…」
やつらの慌てた声。
結果、水を被ったのは私だった。
水で溶けた殻から出たのは、
薄汚れてて、
ボロボロで、
醜くて、
惨めな私だった。

