役名
  薫
  源氏
  柏木
  紫上
  朱雀
  朧月夜

(暗転。スクリーンが降りてきて馬上の薫の影絵が映ります)

薫 父上ー!父上ー!

源氏 これはどうしたことか?身体がない。あの声は薫?
(影絵でうろたえる源氏の姿)

源氏 薫、薫、かおるー!寝取られし愚か者。それはわしじゃー!
 桐壷帝の二の前じゃ、情けない。いや、もっと悪い。むこうは
 孫じゃが、こっちは赤の他人じゃ。ああ情けない。寝取られし愚か者。
 それは・・・わしじゃー!柏木、柏木、柏木、
 にっくき柏木を呪い殺してやったぞ。

薫 父上ー!父上ー!
源氏 ああよく通る声じゃ。何が父上じゃ。父上は柏木じゃ。馬鹿者。
 お前が生まれたばかりの時にわしにそっくりだとぬかした乳母がおったが。
 大ばか者!わしはお前を抱く気もせなんだ、くそっ。

薫 父上ー!
源氏 うるさい!どこが薫じゃ。わしの香りと全然違うじゃないか。
 几帳面で冷静で、ふん、そんなのどこでもおるわ。匂宮のように
 女好きならわかるが、確かにわしはマメじゃった。女も最後まで面倒見る。
 これはまさにわしの実子夕霧じゃ。薫はわしの子ではない!

(トひゅーっと鋭い横笛の音が入り、柏木の影が現れ)

柏木 まあそうおっしゃらずに。
源氏 そういうお前は?
柏木 柏木です。その節は本当にお世話になりました。
源氏 ふん。