「ん…どうしたものか…」

 私が捜索から戻ってきた時、刑事らしき男が頭を抱えていた。私はどうしようもなく、ただそこで呆然としていた。またいなかった。どこ、誠也。戻ってきて。私はその言葉を心の中で繰り返した。

 顔を上げた刑事は私に気付いたのか、私の方を見て、さらに苦い顔をした。そしてそわそわとした様子で、ゆっくりと私の方に歩み寄った。

「あの…大島、明子さんでしょうか」

 男はすらっと背が高い若い男性、もしくは無精ひげを生やした賢そうなおじさん、のようなドラマに出てくる刑事ではなく、背は私よりも背が高めで、ひげはしっかり剃っている、結構生真面目そうな中年のおじさんであった。

 私がはいと答えると、男は物寂しそうな顔で言った。

「そうですか…息子さんは、いらっしゃいましたか」

「いいえ」

「そうですか」

 男は深いため息をつくと、首をひねった。

 そんな姿を見て、私はすぐに問いかけた。

「ところで…あなたは」

「あ、申し遅れました。私はこういうものです」

 男はふところから警察手帳を取り出した。その後すぐに名刺ケースを取り出し、その中の一枚を私に差し出した。

「連絡はこちらにお願いします」

 鶴見源三。大和警察署刑事課の刑事。その課の電話番号。

 これだけの情報が名刺にあった。

 私は名刺を財布にしまい、刑事に一つ尋ねた。

「すみませんが…捜査の方は…」

「今、全力を挙げて捜索中です」

「そういうことではなくて、どういう状況なのですか」

「意外と…難航です。もしかすると…言いづらいのですが…」

 鶴見は私から目を離した。

「何ですか。覚悟はできています。言ってください」

 私は知らずのうちに懸命であった。