「これがいい」

「じゃ、試着してきなさい。終わったら呼ぶのよ」

「うん、分かった。」誠也はトットコと走って行った。

 やはり予想通り、誠也には企みがあった。あの靴下にあったキャラクターがTシャツにあったのだ。しかも値段が高い。しかし文句など言えるはずがなかった。

 試着している間に私は他のTシャツを見回った。そしてあれから三分ほど経ったが、時々その試着コーナーのほうを見るも、一向に出てくる気配はなかった。不可解に感じた私は、すぐに誠也のところへ駆け寄り、カーテンを引いた。

 その時である。そこにはいるはずの誠也はどこにもいなかった。あのTシャツを残して、その箱の中には誰もいなかった。

 私は急いで辺りを探し回ったが、この洋服売り場のどこにもいなかった。そしてサービスカウンターまで行き、迷子の知らせはないかを聞いた。しかし店員はないという。店員はそんな言葉で分かったのか、すぐに迷子のアナウンスをしてくれた。

 そのまま三十分経った。状況は変わらずに、いまだ捜索は続いていた。私はこのデパートの隅々を探したが、どこにもいなかった。そんな時、私の頭によぎる言葉があった。そんな言葉がよぎるたびに、私の足は止まった。

 そして一時間が過ぎ、ついにデパート中が騒いだ。店員も共に探しだしたのだ。一人の子供のために、これだけの団結力を目前にして、少し感動した。

 二時間が経ち、これだけ探しても見つからなかった。そして一つの結論に達した。それはデパート外に出た、ということだ。駐車場、各フロア、関係者以外立ち入らない場所、デパートの近辺のどこを探してもいなかった。

 ついに警察に通報をして、警察が来ると、すぐに取調べが始まった。取調べはいたって簡単であった。そして警察は誠也の捜索を始めた。私ももう一度デパート内を探した。あてのない捜索だが、わずかな希望だけが私に光を照らしていた。