天井をまんべんなく照らす光は、このリビング一室を照らし、私の背中も見続ける。

 私はバッグの中を確認すると、リビングを出て階段の前まで来た。

「誠也、行くのか行かないのかはっきりしなさい。置いていくわよ」

 さっきから呼びかけているのだが、まるで動じない。

「行くよ。少し待ってて」

 ようやくの返事。誠也は少し気だっているようであった。私のほうが気だっていると思うが。

 私はリビングに戻り、ソファーに深く座った。そしてひとつため息をし、時計に目を向け、時間を確かめる。すでに十時半を回っていた。これからの予定がだんだん崩れていくのを、唇をかんで時計を眺めることしかできなかった。

 二階はあわただしい様子で、このリビングにジタバタとした音を響かせた。そしてその音は遠くなったかと思うと、階段に移った。

「行こう」

 誠也はドアを開けると、元気な声で言った。

「トイレへ行かないでいいの?」

「あ…待ってて」

 誠也はリビングを出ると、トイレへ向かった。

 そして私はソファーから立ち、バッグを持ってリビングを出た。

 玄関で靴を履き替えていると、誠也はトイレから出てきて、飛ぶように玄関に向かって走ってきた。そして靴を履き、私よりも先に外へ出た。

 私はその後を追い、車のドアを開け、誠也と一緒に乗り込んだ。そして車はデパートに向かって、ゆっくりと走り出した。

 空は雲で覆われ、太陽を隠していた。私の心は晴れていたが、この後どんなことが起こるか、今の私にはまだ知る由もなかった。