そんな昇が買ってきた弁当を食べないのは、せっかくの思いを踏みにじることになる。昇はいつまでも悲しみばかりに打ちひしがれていたわけではなく、第一に私を心配に思い、こうして弁当も買ってきた。過ぎたことに浸りっぱなしで、いつまでも悲しみに浸っていたのは私ではないか。そして今度は悲しみが形相を変えて私を襲う。
そんなことに構わず、私の手は弁当に伸び、私のもとに引き寄せると、無意識でふたもろともビニールを引き剥がしていた。そして箸を包装から抜き取り、犬が食べる、いわゆる「喰う」を演じるかのように、私は弁当をがつがつと食べ始めた。手が止まらない。次々と口に運び込まれているのが、自分でも驚いた。自分が作る料理よりも、自分の好物よりも、そして昇の今までの愛情の中で、一番おいしい物であった。そしてあっという間に空になった。容器の隅から隅まで舐め回した様に、きれいに食べられた。
私は箸を置き、一息つくと、時計の方を見た。すると時計はぎこちなく針を動かし、今にも外れそうなほどであった。はあ、とため息をつき、外から差し込む月明かりが私の思いを包むように、優しく明るい気持ちになれた。何と言えばいいか、健やかというか、吹っ切れたといった風に、今まで立ち込めていた煙が暗く冷たい闇の空へと出て行った。二酸化炭素で密閉された部屋から明るい外へと出て行くかのように、私ののどを通る空気がやけに澄んでいた。
そんなことに構わず、私の手は弁当に伸び、私のもとに引き寄せると、無意識でふたもろともビニールを引き剥がしていた。そして箸を包装から抜き取り、犬が食べる、いわゆる「喰う」を演じるかのように、私は弁当をがつがつと食べ始めた。手が止まらない。次々と口に運び込まれているのが、自分でも驚いた。自分が作る料理よりも、自分の好物よりも、そして昇の今までの愛情の中で、一番おいしい物であった。そしてあっという間に空になった。容器の隅から隅まで舐め回した様に、きれいに食べられた。
私は箸を置き、一息つくと、時計の方を見た。すると時計はぎこちなく針を動かし、今にも外れそうなほどであった。はあ、とため息をつき、外から差し込む月明かりが私の思いを包むように、優しく明るい気持ちになれた。何と言えばいいか、健やかというか、吹っ切れたといった風に、今まで立ち込めていた煙が暗く冷たい闇の空へと出て行った。二酸化炭素で密閉された部屋から明るい外へと出て行くかのように、私ののどを通る空気がやけに澄んでいた。


