庭師とお姫様 (naturally番外編)

昼間は慌ただしかった城内も、しんと静まり返った真夜中。



夜着に着替えたミリザ姫はベッドの淵に座り、月明かりが射し込む部屋の中をじっくりと眺めていた。



母が亡くなり、姫としての生活が始まってからずっと過ごしてきた場所。



部屋に置かれているモノ全てが、市井から来た自分には似つかわしくない気がして……好きにはなれなかった。



それでも、真面目なシェナに我が儘を言ってお茶に付き合って貰ったり……お互いの誕生日を祝ったり……。
かけがえのない思い出があるのも確かだった。



そっと目を閉じて、王宮での数少ない思い出に浸っていく。



そうして浮かぶのは……会って間もないはずの庭師の笑顔。



彼の笑顔に頭の中が染まっていた彼女が目を開けると、



「……申し訳ないがお静かに願います」



いつの間に侵入したのか人の気配がして、思わずハッと息を飲んだ。



全身黒一色の戦闘装束を身に纏った人影が、短刀片手に彼女の目の前に立っていた。