僕と彼が出会った理由はわからない
でも、そんな偶然的出会いも
悪くはないんじゃないかな


季節は春、心地よい風が頬を撫でる。
「よし、行くか」
念入りに髪やスカートをチェックし僕は家を出る。

進級して初めての登校日。
「始業式の日は可愛くしてくる事!」
と友達に言われ、髪をふわっとさせて、バレない程度にメイクして、スカートを短くして……
あの手この手を尽くしたがやはり似合わない。
「不細工…」
と呟き学校までの坂を登る。

学校に着き、取り敢えず旧自教室へ入る。
ドアを開けるとまだ始業式まで1時間半程もあるのにもう半分以上の人が居る。
出席番号の席に座ると
「杏(きょう)可愛いー!!」
と友人がこっちへ走ってきた。
君の方がずっと可愛いよ
そう思うけど言わない。
女子特有の永遠ループに入りそうだったから。
そういう女々しいのは苦手だ
「あ、ありがとう」
少し遅れたが一応お礼を言う。
しかし、友人は腕を組み
「後は性格なんだよなー」
と考え始め
「ほら、あともう1時間ちょいで私とバイバイになっちゃうんだよ?」
まだどうなるか分からない未来を否定し更には
「性格に難があって、ひとずきしなくて、この冷めっぷり……。私は杏がひとりぼっちにならないか心配だよ。」
などと半誹謗中傷的な事まで言ってきた。
「もうちょっと言い方が…」
僕が注意しようとするとその言葉を遮り
「だって、4月の自己紹介ほんとに酷かったもん!!! 26番日向杏華です。好きなものは特にはありませんが嫌いなものも特にはありません。まあ、一年間よろしく。 って私驚いたよ!!」
ベラベラと話続けられてはたまらないので
「それは、どう言う意味で?」
一応、少し疑問に思ったこで聞いてみた。
「そりゃさ、あんな“世界なんて腐ってる”って雰囲気を醸し出されたらさ、あの子には友達がいるのかとか人間としてちゃんと感情はあるのかとか色々心配だったわよ。」
色々酷い事を言われたがどちらかと言うと一年前の僕の自己紹介を一字一句間違えずにおぼえているところに感心だった。
「うん、大丈夫。心配ないからね。とりあえず君の記憶力に拍手だよ。」