「ねぇ。」

私は彼に声をかける。

「どうしたの?」

「この花覚えてる?あなたが私にプロポーズをしたときにくれた花。今も大切に持っているのよ。枯らしたことなんて無いの。」

「………………………………知らない。」

(えっ……………………うそ。覚えてくれてないの?)

「記憶がときどき抜け落ちてる。君との思い出もあやふやなんだ。ごめんね。」

「ううん。いいの。私はあなたが帰ってきてくれた、それだけで幸せよ。」

(あっ……今、つらそうな顔をした………………
大丈夫かな。)

「どこか気分でも悪いの?」

「ううん。大丈夫。心配しないで」

「そう?辛いことがあったら言ってね。」

……………………少しでも彼の役にたちたい。
私はその思いで彼にそう告げた。