ーーー泣いている君がいる。僕は茂みから君を見ていた。そばには石が地面に突き刺さっている。ああ。そういうことか。僕はすぐに状況を理解した。君は今も泣いている。
あらあら綺麗な顔がぐしゃぐしゃじゃないか。

「大丈夫?」

茂みから声をかけてみると、君はこちらを見て何だ…………狐かという顔をして、また泣き始めた。

やっぱり僕の声は届かない。

君に触れることも出来ない。

近づくことさえも出来ない。

そんな僕に何か出来ることは無いだろうか。

あっ……雨が降ってきた。そのうち強くなる。
君は涙を拭って家の中へ入っていった。

残された狐はいつまでも茂みからあなたを見ていた。