知らないと言われた以上
此処に居るのが辛かった

隣にいるのは間違いなく
トモなのに


私は振り向き、立ち去ろう

“、、、もういいかな"



「待って、もう少し此処に居てくれないか?」

そう言って腕を掴まれた。

トモは自分の隣を指差し
私は、そこに座った。

何も話さなかったけど
隣にいるのは
やっぱりトモで
そっと横顔を見上げると
懐かしく優しい瞳がそこにあった。


昼の5分前チャイムが鳴り響く。


「ありがとな」

「うん、坂上君は、下の名前はトモキでしょ?」

トモは頷いた。

「そっか…私、」

「授業始まるよ」

私は立ち上がり
ただ前を見据えて歩き出した。

“ナツ"

そう聞こえた気がした。
私は振り向かなかった。
私の想いはシャボン玉のように、ゆらゆら揺れて
天に登る前に
はじかれた気がした。