私は、荒木田の五感のうちの視覚を奪った。


それは、あの男が私にやったことと一緒。


私は、無意識にあの男と同じことをしていた。


私とあの男の思考回路は同じ、ということなのだろうか。


……いや、違う。あの男は人を殺めることを快楽とした。私は、そんなものを快楽となんてしていない。


……本当に、そうなのだろうか。


本当に、私は人を嬲ることを快楽としていなかったのだろうか。


違う。そう断言できなくて。


自分のことのはずなのに、自分自身が分からない。


悔しい。悔しい。私はまだ、こんなにも弱い。


並大抵の人間よりも強い、なんて思い上がった自分が恥ずかしい。


何よりも、私があの男と似ている要素があることに激しい嫌悪を抱く。


まだ消え去らない、あの男の面影。


どうすることも出来ない悔しさに、言葉の代わりに胃液を吐き出し続けた。


しばらく嘔吐していると、段々落ち着いてきて、嘔吐を止め、着替えの着物に袖を通した。


井戸から水を汲んで、口をゆすぎ、井戸を後にした。



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