ドガッと鈍い音がして、1、2秒置いてからドサッと倒れる音がした。


つまり、お侍さんAは倒れたのだ。


たぶん、蹴りは鳩尾にでも入っただろう。そんな、柔らかさがした。


「……じ、二郎!?……てめぇ、やりやがったな!?」


威張り腐っていたお侍さんAは二郎というそうです。


うぉぉぉ!と雄叫びをあげながら私に向かってくる、取り巻きお侍さんB。


ダメだよ。すぐに場所がわかっちゃう。


そうおもいながら、取り巻きお侍さんBの懐に入って、刀の鞘で思いきり腹をついた。


「うぐっ!?」


と短い悲鳴をあげて取り巻きお侍さんBも倒れる。


シーンと静まり返るその場。


一拍おいて、ワッと私に歓声があがった。


「いいぞぉ!よくやった、小僧!」


「やるな、小僧!」


その歓声に私は不快感を覚えた。


………何よ。あなた達は見てただけなのに、なんで偉そうに私を誉めてるの?


内心、野次馬に嫌気がさす。そして女性が声をかけるのを待った。


じゃないと、人が多すぎてどこにいるのか、分からないから。


「……あ、あの!!」


「……あ、お姉さん、大丈夫?」


やっと女性が声をかけてくれて、私はそっちを向くことができた。


「僕、ありがとう」


「ううん、お礼を言われるほどじゃないよ」


「ほんに助かったわ。お礼にお団子あげるわ。はい」


「わぁっ!!いいの?」


「もちろん」


「ありがとう、お姉さん!」


ニコッと笑うと、何故か周りがほっこりとした雰囲気になる。


「ふふっ。僕、名前は?」


「榛だよ」


「ハルくんね。いい名前やね」


女性は、にっこりと笑った気がした。