考えられるのは、荒木田が気絶したこと。もしくは、土方さんが一時的に拷問をやめているか。


土方さんも、限界だろう。4時間は拷問しっぱなしなんだから。


中に入るか、それともここで掃除という名の監視をしているか……そう思案していると、沖田さんが私にある提案をした。


『あのさぁ……僕が拷問する?』


『結構です』


むしろ、しないでほしい。沖田さんは奉行所に送る前に間者の息の根を止めてしまうから。


『ちぇー……。じゃぁ、ハルくんが拷問したら?』


『……俺、ですか』


いきなりの名指しで、少し驚く。


『そう。ハルくんなら土方さんも安心して休めると思うし……あ、でもハルくんまだ幼いし……』


私なら、土方さんは安心して休める……。なるほど、沖田さんには珍しくいい提案だ。


だけど、土方さんでも吐かないのに、私でも吐かないのではないか、と思ってしまう。


それに、私は拷問するのが初めてだ。効果的な方法なんて、分からない…………ことはない。


土方さんの拷問は大体肉体的苦痛だ。


なら、私は肉体的苦痛と精神的苦痛を両方与えればいいのではないだろうか。


『……いい提案ですね、沖田さん』


『え?聞いてた?ハルくんはまだ幼いって……』


『俺は17です。幼くありません』


『…………嘘だ〜』


『嘘、なんてつく必要ありますか』


『……ない、よねぇ』


あは、はは……と乾いた笑い声で誤魔化す沖田さん。


『……で?本気?ハルくんが拷問なんて』


『あなたが提案したんですよ』


『いや、僕の言葉なんて八割がた冗談かでっち上げだから』


至って真面目にそう言う沖田さんに、深い溜息をつく。


『ご自分で言いますか、それ』


『だって、事実だし』


それもそうだと頷くと、沖田さんが自慢げにでしょ、と言う。


いや、自慢できることじゃないんだけど。


『ところで、沖田さん』


『ん?なに、ハルくん』


『一つ、頼まれてくれませんか』