台所へ行くまでの道のりで、自分が記憶している限りの荒木田を思い出す。


確か、荒木田は永倉さんと中村さんを襲って失敗し、結髪中を林さんに捕まった。


表向きは斬殺。実際は蔵に連れて行って拷問した。


土方さんじきじきに拷問しても、荒木田はなかなか口を割らない。


土方さんは朝餉は食べ、昼餉を食べていなかったから、約4時間掛かっていた。


蔵の周りを掃除していると、度々聞こえる、荒木田の悲鳴にうんざりしていた。










________………



『ぎゃぁぁぁぁあ……』


あぁ……またか。


『派手にやってるねぇ、土方さんは』


蔵の周りを掃除していると、やれやれ、といった口調で沖田さんが現れた。


蔵の周りは案外枯れ葉だらけらしく、沖田さんの足音がカサリ、カサリと鳴る。


『ハルくんも大変だよね、見張りなんて』


『いえ、これも仕事の内なので』


そう。私はただ気まぐれに此処を掃除しているのではなく、他に隊士が来ないか……言わば見張りをしていた。


だって、斬殺されたはずの荒木田の悲鳴が聞こえるなんて、おかしいでしょう。


『荒木田、だっけ?その人もしぶといよね、あの鬼の副長に拷問されてるのに』


『間者の風上にも置けないとは言えません』


『あれ?ハルくんが人を褒めるのは珍しいんじゃない?』


『俺をどんな人間だとお思いで?』


『んー……秘密っ』


語尾に音符がつきそうなテンションの沖田さんと会話していると、いつの間にか蔵から悲鳴が聞こえなくなっていた。


『……土方さん、殺しちゃった?』


『……まさか』


沖田さんじゃあるまいに。


そう言葉を続けそうになり、口を噤む。


『……今、失礼なこと考えたでしょ?』


疑心暗鬼の言葉と、沖田さんの視線が私に突き刺さるが、取り敢えず気にしない。


『……あしからず』


『もぉー……』


不貞腐れる沖田さんをよそに、私は蔵の中で起こっていることを予想した。