私は、可哀想にと同情はすれど、自分可愛さになにもしない野次馬に嫌気がさし、野次馬を退かしながら向こうへと渡った。


変に目立つのは避けたいけど、仕方ない。野次馬と一緒になりたくない。


私は、男。男として振る舞え。


もう一度、自分自身に言い聞かせた。


「……あぁ?なんだ、お前」


品のないお侍さんがいち早く私に気付いて反応してくれた。


助かった。あなたがどこにいるか、分からなかったから。


心の中でほくそえんだあと、私は、そちらの方向に顔を向けてから少し目を細め、口角をあげた。


「……おじさん、乱暴はダメだと思うな」


「おい、小僧が俺様たちに口出ししてんじゃねぇ」


威張り腐ったお侍さんとは違う声がした。


あら、取り巻きがいたなんて。


それよりも、きちんと小僧に見えているのね。よかった。


まぁ、私は、肩よりうえのショートだから、女には思われないか。


だが、野次馬がうるさい。危ないぞ!とか。


「俺、お母さんに言われたよ。男は女を守るもんだって。それが、格好いい男だって。今のお侍さんはちっとも格好よくない!!」


更に爽やかに口角をあげて言ってみると、お侍さんたちに殺気をまとわりついた。


怒ってる、怒ってる。


少しうつ向き、一瞬だけ嘲笑うと、お侍さんたちはチャキ…と刀を出した。


この時代の人間は、すぐに刀を抜くのね。


その事実に僅かばかり呆れた。


「んなだと?俺様が格好良くないだと!?クソガキが舐めた口聞いてんじゃねぇ!!!」


そう決め台詞を言うと、お侍さんたちは私に向かってくる。


音に集中した。


足の音。走る音。着物が掠れた音。


聞こえるすべてで距離を計る。


「………うぉぉお!しねぇ!」


さっきの一言でお侍さんがどこにいるかがわかり、すぐに蹴りをいれた。