「なぁ…初めてまともに話したついでに、ハルのこと聞いてもいいか?」


咲洲の香りと気配がぐんと近くなる。咲洲が身体を近づけたのがわかった。


どうせ、ダメだと言っても、諦めないのだろう。ならば、さっさと答えてしまったほうが早い。


「いいけど」


「やった!いくぞっ?いくぞっ?」


了解を得た咲洲は小学生のようにはしゃぐ。


「ハルって、何歳っ?」


「17」


「えっ………」


早速固まる咲洲。


なに?そんなに意外なの?失礼じゃない?


「………年上だった、なんて……」


「……ほら、次」


完全に信じていない。少し面白くなかったので、次の質問を催促した。


「……あっ、あぁ。なんで、新選組に入ったんだ?」


「近藤さんに誘われたから」


「もっとこう……具体的に!」


「町娘が浪士に絡まれていたのを助けた。そしたら、近藤さんに声を掛けられた」


「へぇ〜!すげぇな!」


なんの下心のない、咲洲の言葉。純粋に、私のことを知りたがっている。


なんで、他人にそこまで興味が湧くのだろう。


「咲洲……」


「ん?なんだ?」


「どうして、そんなに他人に興味が湧くの?」


「えっ……」


急に私に聞かれて、戸惑う咲洲。


「うーん……。人を、信用したいから?」


「………信用?」


咲洲から返ってくるとは思っていなかった言葉に、聴き返すと、咲洲はうん、と言って続けた。


「相手を信用するためには、まず、相手を知ることだと思うんだ。そして、相手にも自分のことを知ってもらう。私は、信用出来る人を増やしたいんだ」


「信用出来る……人……?」


「おうっ!!信用出来る人ができたら、それは自分の人生の財産になる。普段はそう深く考えないけど、それが根っこにあると思ってる」


そう語る咲洲が、逞しく思えた。


「きちんと考えてる……凄い……」


「おっ!ハルが褒めた!もっと褒めてもいいんだよ?」


いつもはヘラヘラと笑っているけど、きちんと考えているんだ、と感心せざるをえなかった。


「ハルは、他人に興味をもったことねぇの?」


「記憶のある限り、ない」


咲洲の問を一刀両断すると、苦笑を混ぜながら、私の肩をポンと叩いた。


「じゃぁさ、試しにさ、私に興味、持ってみない?」


「…………え」


咲洲がぽつりと言った言葉が理解できなくて、私は数秒間呆然とした。