覚悟を決めて、瞼を固く閉じた瞬間。


「……てっめぇ!!ハルになにやってんだよ、このクソ野郎がぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」


激しい怒号が聞こえ、ドガッと鈍い音がした。


…………え?


気付けば、目の前に佐久田の気配はなく、あるのは咲洲の気配だった。


なんで、咲洲が……?


首をかしげて、不思議に思っていると、咲洲が私の肩を掴んで前後に激しく振った。


その動作につられて、私の首も前後に揺れる。


「あー…あーあーあー…」


「大丈夫か!?怪我ない!?傷口開いてないか!?」


「……やめて、咲洲。……話しづらい」


「なに??言いづらい!?どんなことされたの!?」


「ちょっ…待って」


言いづらいことをされた覚えはない。


「てめぇ……ハルになんてことしやがる!!」


人の話を聞きもせず、佐久田に更なる『制裁』を加えようとする咲洲。


……サ行が無駄に多くてややこしい。


「人の話を聞きなさい、咲洲」


取り敢えず、まだ肩にのっている左腕を掴んで捻り上げた。


「いだだだだだだだだだだだ!?」


痛みと驚きで、オーバーなリアクションをとる咲洲。


………うるさい。 


「うるさい。黙って。息をしないで」


「それ、遠回しに死ねって言ってない!?」


「……………佐久田を縛って」


「えっ!?否定しないの!?否定して!ねぇ、否定して!?」


「早くやってください」


「助けたのに、酷くね!?……って、いだだだだ!」


否定してだの何だのうるさいので、掴んでいる右腕に力を入れる。


5秒ほどその状態でいると、佐久田を縛ると言ったので、離した。