ついた先には何もなく、ただ、闇だけがそこに息づいていた。


「……手遅れだったみたいだね」


「……あぁ。だが、総司」


一くんは僕より数歩前に出て、しゃがみ、おもむろに足元を提灯で照らす。


そこには、明らかに血痕があった。


「……何かがここであったのは間違いなさそうだ」


「…………そう、みたいだね」


街で悲鳴を聞いて、遠かったけれど、半刻しか経っていない。


半刻の間に何があったのかは、僕は別に興味はない。僕が気になるのはここで、殺しがあったのか、どうか。それだけ。


そこに残っていた血痕も、致命的な量ではないので、僕たちはただの喧嘩か何かだと判断した。


そう、判断したけど、ただの喧嘩であそこまでの悲鳴はあがるのか…。


僕の心に僅かなわだかまりを残しながら、僕たちは屯所へと帰った。