真っ暗な世界で

俺が部屋に戻ってくる途中から、荒木田の俺の時とは比べ物にならないくらいの悲鳴が聞こえてきた。


それから半刻後、春は何食わぬ顔で出てきた。


「土方さん。荒木田が仲間の一人の名を吐きました」


「……なっ!?」


俺は素直に驚いた。


俺が二刻(約4時間)経っても聞き出すことが出来なかったことを春はわずか半刻(約1時間)でやっつのけた。


それだけで、すでに春が俺を上回る拷問をしたことが分かる。


「楠小十郎です」


「……承知した。すぐに原田に殺らせる」


「では、俺はまた……」


「まだいるのか?」


俺の問いに春は確信をもって頷いた。


「複数います。出来れば今日中に全員の名前を吐かせたいですね」


春は苦虫を噛み潰したような表情のまま俺の部屋を出て行った。


くそっ……!一番最初にやった、隊士募集が祟ったか。


あの時は数を増やしたくて、隊士の身辺調査を怠った。


そのしわ寄せがここに来るとは。


だめだと分かっていながら、どうしても眉間にシワが出来てしまう。


だが、いつまでもそうしている訳にはいかない。


俺は、原田の部屋へと急いだ。