私は今、指定されたねぐ屋の隣にある廃屋にの前にいる。山崎さんに案内されたから、間違いない。
外にいても、お酒の匂いがする。あと、笑い声も聞こえる。廃屋だから、壁とか色々と脆いだろうから、当たり前だよね。
だとすると、浪士たちはもう少し意識するべきよね。
───ここが、新選組の管轄内だっていうことを。
「ごめんください。春風どす」
手を伸ばすとすぐに戸らしき板にあたったので、それをトントンと軽く叩く。
「んあ?春風かぁー!」
中から春風の二文字で盛り上がる声が聞こえてくる。
木が擦れる音と、ドンと何かに突き当たる音がした。浪士の一人が戸を開けたのだろう。
「だれだ、お前!?」
浪士は私を確認したのか、驚いた。
私の格好は着飾った着物ではなく、いつも仕事をするときに着る、忍者服。
着飾った女が見れると思ったら、何やら怪しい服装をした男がいたんだ。浪士が驚くのも無理はない。
ごめんなさいね。私は春風じゃなくて………
「榛、です」
脇に隠していた苦無を振りかざす。
ドンッと物体にぶつかる音と、グチャッと血と肉が混ざりあった音がした。
「うわぁぁぁぁあ!!」
驚きと激痛と恐怖に叫ぶ男。
あら、ごめんなさい。心臓じゃなかったのね。痛いよね。大丈夫。すぐに楽にしてあげる。
痛みに悶える男に馬乗りになり、腰に何個かつけている苦無うちの一つを手に取ると、先ほど刺した所よりも若干右上を刺す。
「ギャッ…」
短い断末魔とともに男は息絶えた。
奥からドタドタと複数の足音が聞こえる。
「松戸!!どうした!」
私はすらりと刀を抜く。
「おまえ、誰だっ!?」
「ま、ま松戸は!?」
「あれ見ろ、松戸だ!!!」
その、松戸という男の亡骸を見つけたらしい浪士たち。ざわついている。
「おのれぇー!!」
浪士の一人が私に怒号とともに襲いかかってくる。
向かってくるスピードは速いけど、ただ、怒りに任せて襲いかかってきてるとしか思えない。
男の怒号が少し近くなってきたところで、私はスッと刀をその怒号が聞こえる方へ差し向ける。
「ヒッ……」
刀の先端が重い物体にぶつかる衝撃と、その物体を貫く感覚が私の全身を襲い、足を踏ん張った。
それと同時に浪士たちから恐怖の叫びが聞こえる。
私は刀を横にふり、もう力が完全に抜けた物体を刀から抜き取る。そして刀をブンとふり、血をなぎ払った。
だから、言ったでしょう。感情にながされちゃいけない、と。
「ほんと、あなた方は馬鹿なんですね……」
「てってめぇら、や、やるぞっ!」
この浪士たちのリーダーらしき男が士気を高めようと噛みながらも声掛ける。
「おおぉぉぉぉーー!!!」
残り98人がいっせいに刀を抜いた。金属がこすれる音があちこちからする。
新選組が来るまであと25分。
中々余裕ぶる時間はないな。
私は刀をもう片方の手に取る。所謂二刀流だ。
稽古はしてきたが、実戦で付かうのは初めてだ。色々と不安は多いが、数が多いので使うしかないだろう。
外にいても、お酒の匂いがする。あと、笑い声も聞こえる。廃屋だから、壁とか色々と脆いだろうから、当たり前だよね。
だとすると、浪士たちはもう少し意識するべきよね。
───ここが、新選組の管轄内だっていうことを。
「ごめんください。春風どす」
手を伸ばすとすぐに戸らしき板にあたったので、それをトントンと軽く叩く。
「んあ?春風かぁー!」
中から春風の二文字で盛り上がる声が聞こえてくる。
木が擦れる音と、ドンと何かに突き当たる音がした。浪士の一人が戸を開けたのだろう。
「だれだ、お前!?」
浪士は私を確認したのか、驚いた。
私の格好は着飾った着物ではなく、いつも仕事をするときに着る、忍者服。
着飾った女が見れると思ったら、何やら怪しい服装をした男がいたんだ。浪士が驚くのも無理はない。
ごめんなさいね。私は春風じゃなくて………
「榛、です」
脇に隠していた苦無を振りかざす。
ドンッと物体にぶつかる音と、グチャッと血と肉が混ざりあった音がした。
「うわぁぁぁぁあ!!」
驚きと激痛と恐怖に叫ぶ男。
あら、ごめんなさい。心臓じゃなかったのね。痛いよね。大丈夫。すぐに楽にしてあげる。
痛みに悶える男に馬乗りになり、腰に何個かつけている苦無うちの一つを手に取ると、先ほど刺した所よりも若干右上を刺す。
「ギャッ…」
短い断末魔とともに男は息絶えた。
奥からドタドタと複数の足音が聞こえる。
「松戸!!どうした!」
私はすらりと刀を抜く。
「おまえ、誰だっ!?」
「ま、ま松戸は!?」
「あれ見ろ、松戸だ!!!」
その、松戸という男の亡骸を見つけたらしい浪士たち。ざわついている。
「おのれぇー!!」
浪士の一人が私に怒号とともに襲いかかってくる。
向かってくるスピードは速いけど、ただ、怒りに任せて襲いかかってきてるとしか思えない。
男の怒号が少し近くなってきたところで、私はスッと刀をその怒号が聞こえる方へ差し向ける。
「ヒッ……」
刀の先端が重い物体にぶつかる衝撃と、その物体を貫く感覚が私の全身を襲い、足を踏ん張った。
それと同時に浪士たちから恐怖の叫びが聞こえる。
私は刀を横にふり、もう力が完全に抜けた物体を刀から抜き取る。そして刀をブンとふり、血をなぎ払った。
だから、言ったでしょう。感情にながされちゃいけない、と。
「ほんと、あなた方は馬鹿なんですね……」
「てってめぇら、や、やるぞっ!」
この浪士たちのリーダーらしき男が士気を高めようと噛みながらも声掛ける。
「おおぉぉぉぉーー!!!」
残り98人がいっせいに刀を抜いた。金属がこすれる音があちこちからする。
新選組が来るまであと25分。
中々余裕ぶる時間はないな。
私は刀をもう片方の手に取る。所謂二刀流だ。
稽古はしてきたが、実戦で付かうのは初めてだ。色々と不安は多いが、数が多いので使うしかないだろう。

