「乗れよ」
自転車にまたがって、荷台を親指でさす長谷川君。
私は首を横に振った。
「捕まるよ」
「いーんだよばれなきゃ」
「何が悲しくて私が長谷川君の後ろに乗らないといけないんだか。いいよ私。走るから」
長谷川君はちょっと拗ねたような表情になった。
けどそのことには特に触れず、長谷川君の自転車のかごにバッグを投げ込む。
「その代わり、バッグ入れといて?」
「いやいや、走るなら俺が走るし」
長谷川君は自転車から下りると、私に自転車を傾けてきた。
私の荷物が重くて、自転車がぐわんっと傾く。
このままじゃ倒れてしまうから思わず自転車のハンドルを掴む。
「行くぞ、佳澄」
そのまま長谷川君は走って行ってしまった。
自転車を放置して行くわけにはいかないから、自転車に乗って長谷川君を追いかける。
でもこの自転車凄く怖い。足が付かない。
「ま、待ってよー!!」
ふらふらした慣れない足つきで私は長谷川君を追いかけた。

