――彼女が答えを出すのは以外にも早かった。
階段をのぼりながら、いきなりこんなこと言われたら悩むかなぁとか、すごく怪しいしやっぱりこないよなぁとかそんなことを思う。
彼女がついてこなくて、この後学校で会った時、気まずいかな。
今は学校に来ていないみたいだけれど、そのうちまた学校に通えるようになってほしいのが僕の願いだ。
もし学校で会ったら、怪しい者じゃなくて生徒がケガしていたから本当に手当をしてあげたかったんだって言えばいいかな。
彼女は周りに言いふらしたりはしないだろうけどね。
ポケットから、鍵を取り出そうと手を入れた時。
耳に届いた、階段を上ってくる音。
はっと、階段の方へと視線を向ける。
ゆっくりと登ってきた彼女はわずかに不安そうな顔をしていて。
僕はきっと、驚いていたのだと思う。
「……来たんだ…」
いや、自分がおいでって言ったんだけど。
心の声が思わず漏れてしまったことに気付いて、口を閉じてからドアを開ける。
ゆっくりとやってきた彼女に、「どうぞ」と部屋へ招いた。
一歩、玄関へ入って立ち止まり中を見る彼女。
「上がって」
促すように背中を押せば、靴を脱いで部屋へと上がる。



