月の女神

もしかしたら逃げてしまうかもしれないと思ったけれど、それでもいいやと最後にぽんぽんと撫でて部屋へと向かう。


「あった…」


やっぱり。


買いはしたけれど、ケガなんてしなかったから新品のまま。

買ったままの状態の消毒液を見つけて、ふと考える。

消毒液だけでいいかな?

猫って、ケガした部分を舐めるよね。消毒液なめたら、やっぱり体に悪いだろう。


ばんそうこうを張るわけにはいかないし…。


となると、包帯かなぁ。



よし、包帯を巻いてあげよう。

そして、そのまま大人しいようなら治るまでここに避難させてあげたいんだけど、大人しくだっこさせてくれるだろうか。

最初にこのアパートに引っ越してくるときに、ペット禁止と言われたから飼うことはできないけれど。

かなり弱ってるみたいだし、ミルクでも飲ませて回復するまではここにいさせてあげたいな。

また猫に喧嘩ふっかけられたらかわいそうだし。

冷蔵庫を開けて、牛乳があることを確認して部屋を出る。

いるかな…


まだいるかもしれない、と思う気持ちともうどこかへ行ってしまったかな、と思う気持ち半分で階段を降りる。







・・・・・・・いない。





降りてみてみれば、さっきまで猫が横たわっていた場所には、もう黒猫はいなくて。

「おーい」