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わーわーわー!
喧嘩だ。猫の世界も大変だこと。
学校から帰宅して車を降りた瞬間
アパートの目の前で怒っている乱闘。
にゃーにゃーとすごい声を出しながら、威嚇の体制に入って見つめあったかと思えば一気に近づいて喧嘩する猫2匹。
黒いのとミケ猫。
目の前で繰り広げられている為、動くに動けずにそのまま茫然と喧嘩を眺めていれば、
ギャ!とすごい声がした後、一目散に逃げていくミケ猫。
あとに残った黒猫は、そのままぱたん、と伏せてしまった。
…大丈夫だろうか。
さっきのすさまじい声を聞いてすぐには怖くて近づくことはできず
少しずつ様子を窺うように近づいていく。
伏せたまま動かない黒猫。
はぁはぁと体が上下に動いて息をしているから生きてはいるんだろうけど…。
夕暮れのアパートの前。暗くなっていく周りに、今にも溶け込んでしまいそうな黒い体。
「…大丈夫かぁー?」
小さい声で話しかけてみるも、動かない。
勇気を出して距離を詰めて猫の前にしゃがむと、ピクリと体を動かして、わずかに僕の方を見上げる猫と目があった。
そして「にゃー」と弱々しく鳴かれる。
「動けない…?」



