そのまま目で追っていれば、横断歩道を渡って歩いていく。
その横顔、すれ違う瞬間に正面から見た姿。
あの頃と少し、かけ離れていて。
かなり、痩せてるように感じた。
方向からして彼女の母親が入院していると言う総合病院の方から来たから、お見舞いの帰りだろうか。
「先生さよーなら」
「あ、」
授業を受け持っているクラスの子だ。
僕に気付いて笑顔で声をかけられて、気を付けるように言いながら彼女の姿を目で追う。
彼女も、今声をかけてくれた子たちと同じ制服を着て学校に通っている生徒なのに。
少し前まであった笑顔は姿を消して無表情。覇気を無くしてる、と言った方が正解なのかもしれない。
まるで笑顔なんて知らないように、とぼとぼと歩いていく。
声をかけることもできないまま、そのまま彼女は消えて行った。
…まだ、お母さんは目を覚まさないのだろうか。
パトロールから帰って、河西先生に見かけたことを伝えると
彼女のお母さんがいまだに目を覚まさないこと、
いつ目を覚ますかわからないことを教えてもらった。
僕は、すぐ目を覚ますって思っていたのに。
彼女に覆いかぶさってる現実は、僕が考えていたものよりも全然重かった。
―――彼女は大丈夫だろうか。ご飯、ちゃんと食べているのだろうか。
お母さんはまだ目を覚まさないけど、入院している限りお医者さんや看護師さんがきちんとケアしてくれるだろう。



