「あまり無理にはしないようにしてください。彼女の気持ちを最優先で」
「分かりました」
心配ですね…と江藤先生。心配だ。心配だけど、僕は担任でもないし彼女との関係と言えばあの時一回だけ授業を受け持たせて貰っただけで何もできない。
ただ、
疲労やストレスが原因で倒れたのなら、しばらくすればお母さんも回復して彼女も学校に戻ってくるだろう。
そんな風に考えていた。
…けれど。
それから数日たったある日。
近所で不審者が出たと学校に警察署から連絡があり。
教師たちが下校時間にパトロールをすることになった。
僕は何人かの先生と生徒が使う学校からの最寄駅周辺に割り当てられて、歩いていた時。
偶然。
ふら、っとすれ違った彼女に、はっとした。
僕は当たり前のように自分の高校の制服の子を探していて。
無事に帰っているかを見ていたんだけれど、すれ違った彼女は私服で。
そのまま気付かずすれ違ってしまいそうだった。
すれ違った後に彼女の方を振り向けば、僕に気付かなかったのか、忘れているのかゆっくりと歩いていて。



